【R18】スポーツ

 足の付け根に腰を打ちつけていた生駒がぶるりと震えた。動きを止めた彼は水上に覆いかぶさって大きく息を吐き出した。
 水上の腹の中に収まっていたものもびくびくと痙攣した。薄い被膜越しに彼が吐精したのを感じた。最後の一滴まで絞り出すように水上の奥へと擦りつける様は滑稽だが愛おしくもあった。
 生駒が唇を求めてきたので口を開いて応じると、ぬるりとした舌が入り込んできた。器用に動く筋肉の塊に口内を蹂躙される。
 一度達して冷静さを取り戻しつつあるが、上と下が同時に繋がっている状況は欲情をそそる。ベッドと生駒の板挟みになって身動きが取れないというこの状態も相手に主導権を奪われているようで興奮した。日常では水上が仕切ることが多いので逆転した状況に背徳感が生まれるのだ。
 生駒の背中に腕を回した。水上より狭いが厚みのあるそこは、まるで霧吹きで水をかけたかのようにびっしり汗をかいていた。
「相変わらずごっつい汗っすね」
 口づけが解けてから呟く。生駒の鼻先から滴る汗が水上の顔を濡らした。雨漏りのようにぽたぽたと何滴も落ちてくる。熱のこもった吐息が口元にかかってくすぐったい。
「え、そうなん? みんなこのぐらいかくんちゃうん?」
「いや……それは知らんけどイコさん汗かきでしょ。走り込み終わった人みたいやなあって思っとったんですけど」
「そんなん部活みたいに言わんといてや」
「あんたのセックスはスポーツみたいなもんでしょ」
「俺としては雰囲気重視してきたつもりだったんやけど」
 互いに乱れた呼吸での受け答えだった。最中は殺気立って息が荒く声も大きいだとか他にも思うことはあったが、繊細な彼を傷つけるのは本意ではないので胸にしまっておく。
 繋がったまま生駒の腰をさすってやると、彼はまた微かに身を震わせた。ついでに彼を締めつけてやると、再び力を取り戻して膨らんでいくのを感じた。
 ごくりと生唾を飲む音が響いた。
「……っおい」
「随分元気なこって。ほなゴム変えて続きやりましょ」
 あまりに即物的な反応だったので笑い出しそうになった。若い身体は少し煽ってやるだけですぐに火がついてしまう。
 汗で濡れて額に張りついた前髪をかき上げた生駒は自分の唇を舐めた。しょっぱい、と呟く声は低く重い。ランク戦の時のような鋭い視線が注がれ、ぞくりと水上の尾骨が痺れた。
 竹を割ったような性格の生駒のセックスは思いやりはあれどごく簡素で色気はない。二人とも甘い言葉を囁くような性格ではないというのもあるが、情を確かめる行為というより肉欲をぶつけあうと表現するほうがしっくりくる。水上も一方的に食われるだけのつもりはなく、互いに求めあい与えあう。そんな関係に心地よさを感じていた。

初稿
2022年10月2日
改稿
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